札幌のキャビン大阪屋でデモされていたとき、思わず足を止めて「おっ」と聴かずにはいられない美音を奏でていました。それがこの Wadia830 でした。
当時使っていたTEACのVRDS25X の切れのある音色とは違った、透明感がありながらも中音域に芯のある新鮮な音色でした。
値段を見ると50万円をオーバー!「私には無理だ…」
しかしエントリー機だったのがいけなかったのか、Wadia に特徴的な VRDS を採用せずにターンテーブル方式にしたのがいけなかったのか、売れ残ってしまったらしく処分品となり、値段がどんどん下がっていきました。「これならイケる!」Wadia らしさは薄いのでしょうが(エントリー機器ですし)、そこはWadia。ぐいっと全面に押し出る音色が魅力的です。
しかし定価で50万を越える機器の割には貧弱なリモコンと「足」。リモコンは…。全然高級感がない!(CDラジカセ以下のしょぼさです)
「足」は色々(といっても安めのものばかりですが)試しましたが、結局 御影石ベース+J-1 project の青丸に落ち着いています。(そういえばデモでは、5万円クラスのハーモニックスの製品が「足」に使われていました。使いたくても、それこそ足が出る!)
FIDELIX SH-20K を繋いでいた時期は S/A LAB で RCA接続 をしていましたが、現在は WireWorld の ECLIPSE EBI3(0.5m)でXLR接続にしています。
給電は Aural Symphonics の Espresso から CSEのE-100(コンセントは WATTaGATE に 交換)をコンセントボックス的に用いて ACデザインZERO1.4 を繋いでいます。
WireWorld ECLIPSE EBI3(0.5m)
導体にグレン・オプチマイズド銅にポリマーコーティングを施し二重同軸構造になっているケーブルです。定価は、0.5mペアで 61,000円。
全体的にタイトでとても力強い音調です。特に中低音には凄みを感じます。高音の表現力がやや弱く、タイトなあまり息苦しさを感じてしまいます。ジャズやポップスでは、ベースとドラムスの音の輪郭がはっきり表現され、ドスドスとウファーを揺さぶり、低音の固まりが体を直撃するかのようです。この音調に高音に潤いのある響きが加われば申し分ありません。高音の響きが押さえられているということは、ケーブルの防振対策が徹底している証拠でもあるのでしょう。
【追記】アナログプレーヤーのカートリッジを Ortofon MC★20W に、昇圧トランスからアンプまでのケーブルに Ortofon Reference7NX を繋ぎました。
その伸びやかで鮮明な響きに魅了されてしまい、その後にはCDを聴くことができなくなりました。「Wadia830 は悪くない!」とすればケーブルに問題があるはずだ。というわけでバランスケーブルの交換を考えました。いろいろ検討しましたが、同じケーブルにすればアナログプレーヤーとの音質比較もできるということもあって、Ortofon Reference 7NXを選択し購入しました。
Ortofon Reference7NX
導体に7N、6N、5HCu、4NOCC を用いた層別独立異種4芯シールド構造で、接続ピンにはロジウムメッキを施されています。定価は1mペアで36,000円。
ロジウムメッキの効果のためか、高音の伸びがとても素直に響き、低音は凄みこそありませんが出るべき音はきちんと出ていてます。バランスはやや高音よりだと感じますが、素直な音質です。高音が出が良いので、埋もれがちなベースの音も輪郭がはっきりと表現されています。ジャズではトランペットやサックスの音がより明瞭に響き、ポップスではドラムスの音が程よく乾いた感じに響きます。豊かな表現力を感じてしまい、思わず耳が奪われてしまいます。
WireWorld ECLIPSE EBI3 と Ortofon Reference7NX とを比較して、ケーブルは価格ではなく相性で選ぶべきだなという単純な事実を痛感しました。
しかしケーブルはなかなか試聴して購入することができませんし、雑誌などのインプレッションも必ずしも自分の機器にあてはまるとは限りません。結局は価格は決して安くはないのですが、実際に「購入」して相性を判断するしかありません。
ケーブルもオーディオシステムの立派な一部なので、どうやって理想の選択をするかが問題になります。
今回は偶然、アナログプレーヤー用に Ortofon Reference 7NX を購入したところ、私のシステムとの相性を発見し、同じケーブルを選択したことが「吉」となりました。(2006/02/19)
【追記】本当の「Wadia」がどうしても聴きたくって、無理をして愛知県の方から wadia850 std を中古で買いました。(2007/01/9)
Wadia830 とはまったくの別物ですね。カチッとした音像、図太い骨格。これに比較すると 830 は美音系に聞こえます。この Wadia850 はアクシスを通していない輸入物なので、電源は117vです。うちには幸い TX-2000 がありますので、これに繋いで「アメリカン」な音で聴いています。ケーブルはWadia830 に繋いでいた物をそのまま流用しています。非常に満足しています。私がラストオーナーになるまで、使い込みたいと思います。ちなみに4年間頑張ってくれた Wadia 830 は高知県の方に嫁ぎました。彼の地でもいい音を出して欲しいと願ってやみません。(2007/1/31)
【追記2】スパイク受けに KRIPTONのKA-2510c を導入しました。全音域に危害が無く、しかも繊細さを残しながらも豊潤な中低音にも磨きがかかります。特にドラムスやパーカッションの乾いた音色が素晴らしい!気に入りました。当分これで行きます。(2007/2/17)
【追記3】出ちゃった…。
今日、待望の根岸通信製の「ZXLRきんたこ仕様」が届きました。なに簡単に言えば、既存の根岸通信製のZXLR(3芯構造)のメス側だけフルテックのロジウムメッキプラグを用いただけです。ですが何回か根岸さんに直接電話をして相談した結果のケーブルなんです。
根岸ケーブルの重低音を活かしつつ高音の切れ・抜けを求めて、ケーブルの長さやプラグの選別を行いました。まずは通常のZXLRを、最近のレファレンスのディスク(「Bags meet Wes!」とダイアナ・クラークの「Love Scenes」)で聴き込み。そして特製ケーブルに交換。どきどきものです。で、再生。おぉ、高音が抜けて切れがある!しかも中音がソリッドになっている!で、肝心の低音は損なわれずにずずーんと室内を響き渡らせる。これよ、これ。ぼくが求めていたのは!
当初は「色っぽい音」を求めて出発しましたが、いつの頃からか「とにかく迫力!」にシフトしてしまいました。で、いろいろと自分の耳で選別していった結果、現在のシステムにたどり着いたのですヽ(´▽`)ノ(2007/05/14)
【追記4】 Wadia 850 のRCA出力端子に ACOUSTIC REVIVEのIP-2F を装着しました。防塵と防振が主なねらいです。
この手のキャップも安いプラスティック製から黄銅製、そしてこの IP-2F のように異種金属を組み合わせた凝った製品まで多々あります。聞き比べて最もコストパフォーマンスが高い製品を採用したかったのですが、なかなか「評判」も伝わってこないので、とりあえずアコリバのです。(^^;正直「付けた、変わった、良くなった!」と快哉!する即効性は感じられませんでした。このまま付いているのが当たり前になってから外してみようと思います。(2009/03/11)
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【追記5】10月某日、初CD化された「SUGAR LOAF EXPRESS/LEE RITENOUR」 を早速購入しました。さて久しぶりのオーディオだ!とマッキンに火を入れます。
このところ不本意ながらカーステレオ専門だったので、久々に JBL S3100 Mk2 の 38cmウーファーから放出される強烈な音圧に満足!やっぱりこれだね!ってことで気分ノリノリで次なるCDをとイジェクトスイッチを押したのですが、カラカラと音を立てて機能を停止してしまいました。トレイが出てきません。
げ!故障だ。
大学生の時に初めて購入したSONYの CDプレーヤーもトレイがダメになり、廃棄処分になりました。修理して使い続けようと思いましたが、最下層のグレード機器だったので買い替えた方が安いことが販売店のアドバイスで判明。しかたがなく修理を断念。
この故障がきっかけで、小学生から続くきんたこのオーディオ熱は急速に冷めてしまいました。(スピーカーのみサンスイで、それ以外は父親譲りの Pioneer製品でした。小学生の時から高中命でしたので本当はスピーカーも S-180A が欲しかったのですが、高価なのでさすがに無理でした)
閑話休題。
きんたこの wadia850 は直輸入品です。無理を承知で axiss にメールをしました。しかし一ヶ月近く経っても返信がありません。イヤな思いが湧きあがります。
実は2年ほど前に音飛びするようになりました。TEAC P-0(発売当時120万円相当!)を使用している当時の同僚も同様のことが発生したので、「これは世界の終末?」と思い(Wadia850 の定価も100万円!ですが、直輸入の中古品なので30万円で入手しました。んが、それでも充分に非常に高価です!)、メンテナンスの依頼メールをaxissに送りました。しかし返信は来ず。しばらくして同僚ともども復調したので、きんたこは呑気に忘却しておりました。バカダ(´ー`)=3…。
平日の札幌から東京まで私用で電話をするゆとりはありません(きんたこの職業は休息時間だからといって職務外の電話ができる環境ではないのです)。じりじり焦りながらも時間は過ぎてゆきます。ひと月ほど経った11月1日の平日に直帰の出張が入りました。ばんざーい!これでなんとか電話をする時間ができました。
何度もホームページで番号を確かたうえでの電話です。直ぐに繋がりました(きんたこの職場ですと3コール以上でも出なかったりします)。
最初にお話しした方は、面倒な事情を聞いてくださった上で「直輸入品だからといって門前払いはしませんよ」とおっしゃてくださいました。ほっと安心のきんたこ。で、「担当に替わります」。で、替わった担当の方曰く「PSEがうんちゃらかんちゃらなので、お引き受けできません」と。ヽ( ̄▽ ̄)ノ半ば道絶たれた思いでした。しかし気持ち半ばでスイッチング。「お断りします」が想定されていたので、CDプレーヤーを修理していただける工房を綿密に調査しておりました。
広島県の 山手サービスさん です。早速、ホームページにアクセスです。
ところがその当日付のエントリーで「受付終了」とのこと。( ゚ ρ ゚ )!どうしよう…。(2011/10/31)
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山手サービスさんは本業多忙のため修理業務は年明けとのことです。それでも修理をお願いしたい旨を伝えましたところ、後日「修理可能な状態になったので機器を送って下さい」とのことでした。
修理状況はリンク先をご覧ください。破損したトレイの交換、寿命近いピックアップの交換、半田クラックへの修繕、そして電源強化等を行っていただきました。実に細やかなメンテナンスです。オークションなどで axiss の修理明細が明かされることがありますが、おそら山手サービス高橋さんのほうが技術的にも費用的にも良心的です。
帰ってきた Wadia850 は、山手サービス高橋さんのアドバイスにしたがって結露防止のために半日放置し、更にケーブルを接続して数時間暖めておきました。
さて音出しです。まずトレイがシャーと開閉するところで万歳!当たり前の大切さを改めて感じ入りました。いよいよ音出しです。呑み込まれたままだった高音質盤 「SUGAR LOAF EXPRESS/LEE RITENOUR」を改めてPLAYして聴きます。
おぉ、なんと豊かな中低音でしょうか!Wadia850 はこんなにも押し出しの強い中低音が出たのですね!そして中低音が厚みを増したことで高音まで変化がありました。
このCDは最初に聴いたときに、「いやにパーカッションがキンキンするなぁ」と感じておりました。「きっと高音質盤なので仕方がないのだろう」と思いき や、実はそうではなかったのですね。キンキンしてしたパーカッションは中音に自然に融け込んでおりました。Wadia850 本来の音+電源強化による往年 の音(by山手サービス高橋さんの言)は、なんとも豊潤かつ色っぽい音色です。この音を聴けば、まだまだPCオーディオにいけませんね。(´ ▽ ` )ノ(2012/01/15)
【追記6】体調などの理由から、暫くオーディオで遊べませんでした。
あるとき古いファイルボックスを整理していると、以前参加した「福田屋」の資料を発見しました。試聴したケーブルに採点がしてあるのですが、AETのSCR に最高点を付けています。むむ、錆びてしまったエンジンに再び火を入れるために新規導入だ!もし失敗だったら、オークションに速攻で出品すればいい。
AET SCR LINE EVD(XLR)
導体に純国産のプレミアム・バージン無酸素銅を、絶縁体には非カドミウム系の高純度FEP・石英ファイバーを使い、3層SHT(小径円筒)・2芯平行配置の構造かつ高純度貴金属コーティングを施した純国産のカスタムプラグを装着した、定価0.8mペアで96,000円の贅沢なケーブルです。
出てきた音を聴いて大爆笑しました!これは「オーディオショップの音」だ!「きんたこサウンド」ではない!!まさかうちのリスニングルームでこんな音が出るなんて…。もちろんありがたく採用させていただきました。この製品の信者が多いのも肯けますね。(2013/10/20)
【追記7】ブログとホームページを更新しないあいだに、お気に入りの AET SCR EVD をある事情で売却してしまいました。
その後、代替になる好みのケーブルは見つからず、SCR EVD を手放してしまったことを改めて激しく後悔しました。一方、空いているRCA出力端子には、Ge3の要石25と要石+脈々を接続して、仮想アース対策を万全にしました。以前よりも音のメリハリがつき、静寂さが際だつことが感じられます。
月日は流れて、PC-Triple C導体を用いた SAEC のケーブルの高い世評を耳にしました。迫力よりも繊細さに秀でているというレヴューが不安でしたが、透明感がありながらも重心は低いという点が実に私好みです。
以前なら「後悔しないため、そしてリセールバリューがあるため」と、10万円クラスのケーブルを躊躇いながらも選んだものです。しかし現在は金銭的な問題もありますし、導体が同じであれば出てくる音も同じ傾向であろうと思い、一番ベーシックな SAEC XR-3000 を試験的に選択しました。
SAEC XR-3000
導体に超低歪率かつ高伝導率という安定した電気的特性を持つ PC-Triple C を、絶縁体には比誘電率の低い制振材が入った発泡ポリエチレンを使用し、銅箔シールドと編組の二重シールドでノイズ対策も万全にした、0.7mペアで29,000円のケーブルです。届いたケーブルを McIntosh MA6900 に早速刺して高中正義の「SEYCELLES」を Wadia850 のトレイに置きました。演奏が始まりました。高中の奏でるアコースティックギターの音が、ぱぁっと透明感が広がる空間に爽やかに鳴り響いています。あぁ、これだ。このケーブルは正解だ!(2018/10/10)
山手サービスの高橋さんにお願いした、Wadia850のパワーアップが一次完了して我が家に帰ってきました。今回は、音質を改善するためにオペアンプとクロックの換装および諸々の調整です。一筋縄ではいかなそうな作業なのですが、相変わらずリーズナブルなお値段で手がけていただきました(ただし二次三次と改善のステージが進むと総額は結構なお値段になる)。名付けて「Wadia 850 【LTD音質改善】」。これが【LTD】を経て、最終段階では【Blue】と変化します。聴いてみたいのですが、金銭的に依頼が難しく、悩ましい。
さて肝心の音質ですが、更に中高域の密度が増しました。スネアやハイハットの音がバシッ、ガッシャンと響き、レコーディングの風景が垣間見えるようです。全体的に重心が低くなりながらもぷりっと粒立ち、残響音の立ち昇りも霞まずに感じられて、なんとも気持ちの良い音でCDが楽しめます。これぞ「音楽」。(2019/08/29)
ある日、いよいよ頼みの綱である特定のCDも読み込めなくなってしまい、例のごとく山手サービスさんにSOSのメールを送りました。遣り取りの中で「Wadia850をこの機会にBlue化しませんか」と提案されました。予算オーバーになるので悩みましたが、修理のたびごとに少しずつバージョンアップさせるのは時間のコストパフォーマンスがとても悪い。更には自分の年齢の問題もあります。いつまでものんびりとしてはいられません。そこでえいっとばかりに金銭的には無理をして修理及びBlue化をお願いしました。
山手サービスさんのもとに「修行」させて2ヶ月程後、見た目は変わらないが電解コンデンサやオペアンプの交換などで中身は大きく変貌したWadia850が帰ってきました。
修理の結果、読み込めなかったのはピックアップの経年劣化によるものでした。良品に交換してもらったので、また暫くは心配なく使用できるというものです。
さてBlueになった音ですが、Wadiaらしさが薄くなったか?というのが正直な印象です。音の鮮明さが増したとき「薄皮が剥けたようだ」と表現しますが、今回は「薄皮」ではなく「透明な壁」が取り払われたといったレベルです。鮮明さが増したことで鳴っている楽器の力強さも向上しました。低音はダレずにギュッとまとまり、乾いて切れのある音を奏でます。空間の表情が雑味なく深まったので、表現力が別物のCDプレーヤーに変成したようです。録音の良いCDは勿論のこと、古いCDでも「悪くない」音質で鳴らしてしまいます。

一聴、迫力が増した印象が強いのですが、聞き込むと実はどの帯域も強調されていないことに気づきます。Wadia850の癖が軽減されて「フラット」なサウンドが奏でられているのです。復活させたFidelix Sh-20Kは再び引退することになりました。接続すると明らかに力感が減少してしまうのです。山手オーディオさんのブログによるとWadiaは20Khz以上の音を出力しているので、そのことが因んでいるようです。「澄み切って精緻な音像」=Blue化万歳!といったところなんですが、Wadiaが持っていた「むんむん」とした雰囲気は明らかに薄くなりました。「澄み切って、むんむん」は流石に矛盾した表現ですよね。今までのセッティングだと、ちょっとキンキンが強いようです。試行錯誤の末、Wadia850の電源ケーブルを廉価ですが素性の良いものに替えると素直な音になりました。(2023/6/10)